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2025.12.09

【特別鼎談】NFTでつながる“熱狂”の作り方――Web3時代のコミュニティ戦略とは

NFTという新たなテクノロジーを通じて、ただの「作品販売」にとどまらず、熱量の高いコミュニティと持続可能な経済圏を築き上げてきた3人がいる。アート、カルチャー、テクノロジーが交錯するNFTの世界で、いかに「共感」を生み、ファンを「共創者」へと変えていくのか。Web3時代の新しいコミュニティの形について語り合っていただいた。

※本記事は『MetaStep Magazine』に掲載した記事を再掲載したものです。その他の記事は冊子でお読み頂けます。

NIKO氏

福岡県出身の日本のイラストレーター・NFTクリエイター。2021年からNFT分野で活動を開始し、2022年に自身のプロジェクト「NeoTokyoPunks(NTP)」をリリース。NTPはわずか2分で全2,222体が即完売し、OpenSeaで世界取引量ランキング27位、国内1位となるなど、国内外で大きな注目を集めた。日本文化を世界に発信することを目標とし、SONYとの連携やアニメ映画著作権とNFTを紐付けるなど、先進的な取り組みも行っている。

ROKU氏

ジャンクフードをモチーフにしたキャラクターブランド「JUNKeeeeS(ジャンキーズ)」のデザイナー。アパレルEC会社を経て2022年にブランドを立ち上げ、NFTは即完売や高額落札を連発し、OpenSeaで世界3位・日本1位を記録。UNIQLO、KDDI、CAPCOMなど大手とのコラボを展開し、αUアンバサダーとしても活動。2025年からは専門学校講師として、未来のクリエイター育成にも力を注いでいる。

ヒオキン氏

シュールな被り物キャラクターのNFTコレクション「カバードピープル」を展開し、NFTをきっかけに構築した約1,000人が所属するコミュニティの設計・運営を担当。NFTを単なるアートに留めず、現実世界の資産やプロジェクトと結びつけ、数百年後も続く持続可能な経済圏の構築を目指している。AIやWeb3など幅広い分野で活動する起業家としての顔も持ち、「くだらないことにこそ価値がある」という独自の哲学で経済圏を拡大している。

熱狂は「共感」から始まる

「NFTは売って終わりじゃない。むしろ、そこから始まるんです」―― ROKU氏のこの言葉は、3人の共通認識とも言えるだろう。

NFTは単なるデジタルアートではなく、ファンとの共創によって進化していく「場」であり、「物語」である。「ジャンキーズ」は、ジャンクフードをモチーフにしたキャラクター群を起点に、NFT、アパレル、イベント、地方創生などを巻き込んだクロスメディア展開を行っている。その背景には、「世界的IPを日本発で作りたい」という明確なビジョンがある。NFTを起点にしながら、ファンが自発的に描いた二次創作アートは2,000点を超え、コミュニティメンバーは3,000人規模キャラクター開発や、コミュニティイベントなど、ファン自らが企画を考え、運営にも参加できる構造が熱量の源泉となっている。

NIKO氏が手がける「NeoTokyoPunks(NTP)」も、NFTの本質を「共感装置」として捉えている。NIKO氏の描くサイバーパンクな横顔キャラクターは、2050年のメタバース都市・東京を舞台とした世界観に貫かれており、日本アニメとストリートカルチャーを融合させた独自のビジュアルが国内外の共鳴を生む。わずか2分で全2,222体が完売した背景には、作品に込められた「日本文化を世界へ」という強い想いがあった。「共感してもらえる世界観があれば、作品は国境を越える」とNIKO氏は熱く語る。

一方でヒオキン氏は、NFTをネタやくだらなさと結びつけ、日常に笑いや余白を持ち込むことに価値を見出す。「全てをネタに変える」という哲学のもと、「カバードピープル」では、被り物キャラや階級制度、大喜利文化などが自然発生的に盛り上がる。ヒオキン氏が強調するのは「経済圏としての持続性」だ。NFTとリアル資産を結びつけたRWAへの接続や、牡蠣産業との連携、地方との共創など、笑いの裏に着実な設計と未来構想がある。

3人に共通するのは、NFTをプロダクトとしてではなく、「共感の媒体」として捉えている点だ。作品に込めた思想や世界観に共鳴したファンが、クリエイターとともに物語を紡ぎ、拡張していく。熱狂の起点は、常に「共感」なのである。

「共創者」を育てる設計「NFTを買ってくれた人は、ただの『お客さん』じゃない。共犯者であり、共創者なんです」―― ヒオキン氏がそう語るように、3人はファンを単なる「消費者」ではなく「共に物語を作る仲間」として捉えている。「ジャンキーズ」では、Discordを中心に、キャラクターのネーミングや新作の企画、販売方針に至るまで、ユーザーの意見を反映するシステムを実装している。NFT保有者には、報酬や参加権などのインセンティブが用意されており、投票によってプロジェクトの方向性が定まる仕組みは、ファンの「自分ごと化」を促進している。単なる作品の購入ではなく、ブランドを自ら育てているという実感が、長期的なエンゲージメントを支えている。

NIKO氏も、プロジェクトに共感したユーザーを「応援団」として迎え入れ、意見交換や情報共有の場を設けている。「クリエイターが1人で世界に立ち向かうのは無理。でも、共感してくれる仲間がいれば、世界中とつながっていける」。そんな信念のもと、日本人クリエイターとしての矜持を込め、アニメ映画の著作権とNFTを紐づける実証実験や、SONYとの協業などにも挑戦している。大手企業や自治体との連携は、彼のコミュニティの拡張でもあり、プロジェクトに参画するファンにとっても誇りとなる。

ヒオキン氏の「カバードピープル」は、異色ともいえるコミュニティ設計が光る。ユーモアと遊び心に満ちた階級制度や「ネタ投稿」文化を通じて、参加者の承認欲求と創造性を自然に引き出す。「役職を与えることで、主体性が生まれる。『大総統』になれば責任も出てくる(笑)」と語るように、肩書きさえもエンタメ化し、コンテンツとして昇華させている点がユニークだ。NFTは単なる証明ではなく、「物語に参加する鍵」であり、コミュニティという舞台の入場チケットなのだ。いずれのプロジェクトも共通しているのは、ファンとの関係性を「参加型」に変換している点だ。受動的なファンではなく、能動的な共創者へ。Web3のコミュニティ戦略とは、ファンの熱量と主体性を信じることから始まる。

「熱狂」を持続させる条件

「熱狂を『続けさせる』ことが一番難しい」―― この鼎談で、3人の意見が最も一致したテーマが「持続性」だ。NFT ブームの波に乗ることはできても、その先で信頼と価値を保ち続けるには、明確なビジョンと設計が必要になる。ROKU氏は、ジャンキーズをNFT の枠にとどめるつもりはないという。漫画やアート、アパレル、キャラクターグッズなど、多彩な表現で「誰もが楽しめるコンテンツ」を発信し続けている。発足からわずか3年でPOP-UPやアートイベントに20回以上参加し、その存在感を全国に広げてきた。また、〈アート×フード〉の自主主催イベント「ジャンキーズフェス」ではコミュニティメンバーとの絆を深め、NFTを活用した復興支援やふるさと納税連携にも挑戦し、社会貢献と存在意義を多方面に広げている。

NIKO氏が指摘するのは「アート自体の進化」だ。「NTPが売れたのは、時代のタイミングと世界観がマッチしたから。でも、次のフェーズではアートとテクノロジーをどう融合させるかが鍵になる」と語り、次回リリースではインタラクティブ性やアニメーションの導入も構想している。加えて、「一人では限界がある」と言い切り、チームづくりと外部との共創を重視。今後はDAOやIP 展開のスキームを整え、作品とコミュニティを「分人化」していくという。ヒオキン氏は、「人が辞めていくのは、飽きたからではなく、自分の存在価値を感じられなくなるから」と語る。

だからこそ、「カバードピープル」では参加者の役割や肩書きがユーモアを交えて与えられ、それぞれの居場所が自然に用意されている。ヒオキン氏が目指すのは「数百年後にも笑っていられる経済圏」。そのためには、短期的な投機よりも、「続けたくなる関係性」の方が重要だと強調する。

Web3時代のコミュニティは、技術やトレンドだけでは育たない。求められるのは、思想、熱量、仕組み、そして「人の心に火を灯し続ける力」だ。NFTの未来は、熱狂の「設計」と「持続」にかかっている。