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2026.02.02

「資金は1/100、成果は1.5倍」女性起業家のポテンシャルと、壊すべき5つの壁

日本のスタートアップシーンにおいて、女性起業家は依然としてマイノリティだ。「起業は男性の世界」という古い固定観念は、データを見ても明らかである。しかし、その「少数派」が叩き出しているパフォーマンスの実態を直視したとき、投資家も、そして私たち社会全体も、色めき立たずにはいられないはずだ。
2026年1月14日、ボストン コンサルティング グループとMPower Partners Fundが発表した最新の調査レポートは、女性起業家が直面する過酷な「壁」を浮き彫りにすると同時に、その壁の向こう側にある巨大な可能性を証明してみせた。これは単なるジェンダーギャップの是正を訴える報告書ではない。日本経済がまだ使い切れていない「最大の未開拓資源」についての提言である。(文=JapanStep編集部)

「5つの壁」に阻まれる、埋もれたダイヤモンド

(引用元:PR TIMES

今回発表された「スタートアップ調査:女性起業家を取り巻く課題と解決策」は、国内スタートアップ46社へのアンケートと、9社へのインタビューに基づき、その実態を可視化したものだ。まず突きつけられるのは、あまりに厳しい現実である。

国内のスタートアップ起業家における女性比率は約1割に過ぎない。さらに衝撃的なのは資金調達の格差だ。2024年の資金調達額上位100社において、女性起業家による調達額の合計は、なんと全体の1%未満にとどまっている。

なぜ、これほどまでに資金が回らないのか。レポートは、女性起業家の活躍を阻む要因として、「人材・スキル」「プロダクト」「資金調達」「制度・インフラ」「文化・社会」という「5つの壁」を特定している。これらは単独で存在するのではなく、複雑に絡み合って巨大な障壁を形成している。

特に深刻なのが「プロダクト」と「資金調達」の壁だ。調査に回答した女性起業家の約半数が「技術開発」に難しさを感じており、81%が投資家から「市場規模や拡張性」についての指摘を受けているという。女性起業家が志向しやすい「公共・教育」といった社会課題解決型の事業領域は、VC(ベンチャーキャピタル)が好む「製造・エネルギー」などの領域と必ずしも一致せず、結果として大口の資金調達が困難になるという構造的なミスマッチが起きているのだ。また、男性中心の起業家コミュニティに入りづらく、気軽に相談できるメンターが不足しているという「ネットワークの壁」も、孤立を深める要因となっている。

投資対効果1.5倍の「隠れた鉱脈」を掘り起こせ

しかし、このレポートの真価は、課題の指摘だけにあるのではない。最も注目すべきは、それらの壁を乗り越えた先にある「圧倒的な投資対効果」のデータだ。
調査によれば、2020年から2024年にかけて、創業初期の女性起業家の企業評価額は男性起業家の半分にも満たない。ところが、「調達額に対するIPO(新規株式公開)時の時価総額」を比較すると、女性起業家は男性起業家の「約1.5倍」という高いパフォーマンスを記録しているのである。

(引用元:PR TIMES

これは極めて重要な示唆を含んでいる。女性起業家は、男性よりもはるかに少ない資金、低い評価額からスタートしながら、最終的には投下された資本に対してより大きなリターンを生み出しているのだ。いわば、極めて「資本効率」の良い経営を行っている証明と言える。

この事実は、女性起業家支援の文脈をガラリと変えるものだ。「マイノリティだから支援すべき」というCSR(企業の社会的責任=Corporate Social Responsibility)的な話ではない。「高いリターンを狙うなら、過小評価されている女性起業家にこそ投資すべき」という、極めてドライな経済合理性の話なのだ。

技術的な知見やスケールアップのノウハウを補完するエコシステムが整い、彼女たちに適切な資金が供給されたらどうなるか。今の1.5倍どころではない、大きな成長が期待できるのではないか。

現在、多くの女性起業家が「市場が小さい」と判断されがちなニッチな社会課題に挑んでいる。しかし、その細やかな視点こそが、まだ誰も気づいていない市場を切り拓く鍵になる。JapanStepは、この「隠れた鉱脈」に挑む挑戦者たちを応援したい。壁は高いが、それを壊した先には、日本経済を再浮上させるだけのポテンシャルが眠っている。