
新たな「挑戦」をするとき、英語は武器の一つになる力だ。一方で、日本人の多くが「英語学習」という壁に悩んでいるのも事実だ。学校や仕事の忙しさで時間が取れない。意欲をもって始めたものの3日坊主。モチベーションがどうしても続かない。何度も新しいテキストを買っては積読…。こうした経験をした読者の方も多いだろう。本連載では、現在英語を使って活躍している方に、具体的な学習法やモチベーション維持の工夫を伺い、紐解いていく。記念すべき第1回には、シンガポールとドバイを拠点に活動するRie Tokuzawa Office 代表の 徳沢理絵 さんに話を聞いた。(文=JapanStep編集部)
お話を聞いたのは…

Rie Tokuzawa Office 代表
徳沢理絵さん
Webメディア企画広告営業・ディレクターを経て、2016年よりシンガポールに移住。「日本と海外の架け橋となる」イベントプロデューサー/MCとして、食・美容・心理学・Web3など幅広い分野で活動し、延べ5000名以上を集客。シンガポールで初となる外務省国際女性会議WAW!公式イベント「Singapore Women’s Empowerment Forum」を主催した。
また、「すべての子ども達が明るい未来を描ける社会」の実現のため、海外子女教育における特別支援教育拡充のため首相官邸を訪問し、世界初となる海外日本人中学校への特別支援学級設置に貢献。2025年よりドバイ不動産仲介会社Eminence Luxeに参画。ライフワークとしてオンライン講座・コミュニティも主宰している。
Rie Tokuzawa Office 代表の徳沢理絵さんは、2016年からシンガポールを拠点に活動し、PR・マーケティング・イベントプロデューサー・MCとして実績を積み重ねてきた。食や美容、心理学、Web3といった分野でイベントを手がけ、延べ5,000名以上を集客。さらに、シンガポール初となる外務省主催・国際女性会議「WAW!」の公式イベントを主催するなど、「日本と海外をつなぐ存在」として現地で確かな存在感を放っている。近年は活動の舞台をドバイにも広げ、不動産仲介会社Eminence LuxeのVice President兼CMOとして、現地デベロッパーとの交渉や国際案件にも携わっている。
こうした経歴だけを見ると、英語はもともと堪能で、海外経験も豊富だったのではないか──そう感じる読者も多いだろう。しかし本人に英語学習のスタート地点を尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。
「帰国子女でも何でもなく、日本の学校教育の英語だけです」(徳沢さん)
特別な留学経験も、体系的な語学トレーニングもない。それでも徳沢さんは、英語を「話せるかどうか」ではなく、「使い続けられるかどうか」という軸で捉え直し、仕事と人間関係の幅を広げてきた。その出発点となったのが、日本で働いていた頃に身につけた、あるシンプルな学び方だった。
「日本にいた時、一番会話に役立ったのは、言い回しの型(構文)でした。TOEICなどの構文集教材に出てくる頻繁に使われる文の型や、海外の友人がよく使う文の型を覚えて、その型に自分の言いたい単語を当てはめて練習をする。言い回しのストックが増えるほど、話せる内容も増えていきました」(徳沢さん)
単語帳を丸暗記するのでも、難しい文法を完璧に理解するのでもない。「この形で言えば通じる」という型をいくつ持っているか。それが、会話の安心感につながっていたという。
「当時、フランス人の上司や海外からの来客を案内する機会がありました。そのとき、覚えた構文が本当に役に立ったんです。ほかにも、N H Kラジオ講座でイタリア語をマスターしたのですが、同様に、イタリアからの留学生を案内するボランティア活動を通じて、実際に話す機会を作ったことで使える言語になりました」(徳沢さん)
2016年にシンガポールへ移住してからも、その姿勢は変わらない。オンライン英会話を試したこともあったが、徳沢さんには合わなかった。代わりに選んだのは、「英語を使わざるを得ない場」に自分を置くことだった。
「現地の友達をたくさん作って、ランチやディナーに行きました。『英語を上手く話せるようになりたいから、教えてくれる?』と正直に伝えて、『こういう場合は何て言うの?』『フォーマルな言い方は?』と、わからないことはその場ですぐに質問しました」(徳沢さん)
その代わり、日本の文化や価値観、美味しいお店やおすすめスポットを伝える。
「シンガポールは日本に好意的な方が多いので、日本のことや日本語について質問されることも多いし、私も英語だけなく、相手の国の文化や政治についても質問して、そうやって文化や言語の交換するのが楽しくて」(徳沢さん)
英語を「勉強の対象」として抱え込むのではなく、「たくさんの人・情報とつながる道具」として扱う。その切り替えが、英語スイッチの最初の一歩だった。

農林水産省が推進する日本の農林水産物・食品の輸出プロジェクト、GFP Singapore ではバイリンガルMCを務めた。現地有名シェフと連携し、日本の野菜・果物・水産物や加工食品の新しい食べ方を提案するなど、合計で90商品以上のGFP産品を紹介し、市場拡大のキッカケとなるイベントになったという(写真提供=徳沢理絵さん)
英語を使い続ける中で、徳沢さんはもう一つの重要な気づきがあった。それは、日本語で考えた文章を英語に訳そうとしないことだった。
「日本語をそのまま英語にしようとすると、単語が出てこなくて止まってしまう。だから、自分が一番伝えたい『核』は何かを考えるようにしました」(徳沢さん)
「例えば、『昨日、夫と些細な事で口論になって、今朝は気まずい空気のまま出てきてしまったの』と伝えようとして、ここで『些細なこと』って、英語でなんて言うんだっけ?『口論』『気まずい空気のまま』って?と考えると言葉が出なくなるので、まずは『昨日すごく悲しいことがあったの』から始める。大事なのは自分の気持ちを伝えることなので」(徳沢さん)
複雑な日本語を、そのまま英語に変換しようとするのではなく、感情のコアをシンプルな言葉で伝える。言いたいことを分解して、優しい単語で説明できるようになってから、徐々に語彙を増やしていく。この思考の切り替えが、「正しく話さなければならない」というプレッシャーを外してくれたという。
さらに、学習を続けるための工夫として徳沢さんが実践しているのが「もくもく(黙々)会」だ。
「英語を勉強したい人たちでLINEグループを作って、参加している人がそれぞれ目標を決めて宣言して、一緒に自習する場なんです。例えば『毎日30分、英語で日記を書くことを15日間続ける!』と宣言。自分のタイミングでLINE通話につないで、会話はせずミュートにするんです。画面には、同じ時間に黙々と学習する仲間の姿が並ぶ。終わったら『今日の目標30分完了!』と報告する。それだけで、不思議と達成感が生まれ、学習が習慣化していくんです。一人だと挫折しがちでも、誰かと場を共有することでモチベーションが維持されています」(徳沢さん)
加えて、徳沢さんはAIの活用も積極的に勧める。
「実際に英語を使いたいシーンを想定して、AIにロールプレイをお願いする。音声入力の精度も高いし、人間相手だと緊張する人でも、AIならハードルが低いですよ」(徳沢さん)
AIはあくまで練習相手だが、何度失敗しても恥ずかしくない。その積み重ねが、「話しても大丈夫」という感覚を育てていく。最後に、英語学習に悩む人へのメッセージを尋ねると、徳沢さんはこう語った。
「英語ができるようになると、相手の考え方や文化をより深く理解できます。翻訳ツールは凄い勢いで発達していますが、自分の声で伝える方が、”想いの熱量”が伝わるし、相手をより理解したい、というリスペクトも伝わると思います。とはいえ、私の英語力もまだまだこれから。一緒に楽しく英語学習を続けていきましょう」(徳沢さん)
英語学習のヒント
・正確さより「何を伝えたいか」を先に決め、感情の核から話し始める
・中学・高校英語レベルの構文を軸に、単語を入れ替えて会話を成立させる
・仲間とAIを活用し、一人で抱え込まない学習環境を自分で設計する