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2026.06.11

AIに引用される企業へ。広報活動の新指標

「分からないことは検索するよりAIに聞く」。そんな情報収集スタイルの変化が、企業の情報発信に見直しを迫っている。AIが消費者の問いに答える際、自社の情報が引用されなければ、消費者の選択肢にすら入らない時代が訪れようとしているからだ。
「AIに選ばれる企業」になるために、これからの広報活動には何が求められるのか。現場の担当者たちのリアルな声から、次の時代を勝ち抜くための戦略が見えてくる。(文=JapanStep編集部)

AI引用を意識するも、立ちはだかる壁

2026年4月30日、リサーチデータマーケティング事業を展開する株式会社IDEATECHは、広報・PR担当者207名を対象に実施した「LLMO(大規模言語モデル最適化 )時代の調査PRに関する実態調査」の結果を公表した。

(引用元:PR TIMES

調査から浮き彫りになったのは、AI時代の到来に対する強い危機感と、具体的なアクションへ踏み出せない現場のジレンマだ。企業の広報活動は「認知向上」や「信頼醸成」を主目的としているが、過去1年間でPR方針に変化があったと答えた層のうち、4割超が「生成AIの回答で引用されることを意識するようになった」と回答。さらに、担当者の半数以上がAIへの自社情報引用を常に意識していることが分かった。

現場の担当者からは「AI活用が進む中、社名認知は事業にも採用にも影響する」「SNSなどで情報が拡散される中で信頼性を維持したい」といった切実な声も挙がっており、情報環境の急激な変化に対する焦りがうかがえる。

(引用元:PR TIMES

しかし、その危機感が実際の行動には結びついていない。生成AIの回答での言及状況を成果指標として測定しているのはわずか2.4%にとどまり、具体的な対策を行っている企業も1割に満たない。AI対策として有効とされる「専門的な解説コンテンツの充実」や「独自データによる実態解明(調査PR)」への関心は6割を超えるものの、実際のプレスリリースのネタは既存の「自社の取り組み」や「サービスのアップデート」に偏っているのが現状だ。

多くの企業が「社内リソースの不足」や「集計・分析の難しさ」という壁に直面し、重要性を理解しつつも実行をためらっている実態が明らかとなった。

一次情報を自ら創り出す。次世代のPR戦略

この実態調査から導き出されるのは、これからの情報発信において「一次情報(自社独自のデータや調査結果)」をいかに創り出すかが、企業の競争力を左右するという事実だ。

生成AIは、すでに世の中にある情報を整理・要約することには長けているが、新しい事実を自ら生み出すことはできない。つまり、自社で独自の調査を行い、誰も知らない実態やデータを一次情報として発信し続ける企業こそが、AIにとって価値のある情報源として認識され、優先的に引用されることになる。調査結果でも、広報担当者の約8割が「今後、一次情報の重要性がさらに高まる」と回答している通り、他社の情報を後追いするのではなく、自らが事実の発信源となることが求められている。

社内のリソース不足や分析の難しさが壁となるのであれば、外部の専門パートナーを活用したり、小規模なアンケートから始めて少しずつ社内にノウハウを蓄積したりするアプローチが有効になるだろう。

検索順位を競い合っていた時代は終わり、AIと消費者の双方から「信頼できる専門家」として選ばれる時代が到来した。独自のデータを発信し、業界の実態を紐解いていくこの挑戦は、企業のブランド価値を高めるだけでなく、日本全体のビジネス情報の質を底上げし、社会に活力を生み出す足がかりとなるはずだ。