都市部を中心に、初心者向けの基礎講座からビジネスでの実践的な活用セミナーまで、多くのイベントが開かれ、進化を続けている生成AI。しかし、地方の中小企業や自治体の現場では、「AIがすごいのは分かるが、自社のどこで使えるのかが分からない」、といった声も少なくない。関心はあっても身近に相談相手はおらず、外部の専門家に依頼しても、プロジェクト終了とともにノウハウは持ち帰られてしまう。地域の中に知見が蓄積されないという「距離の壁」もまた、地方のデジタル化が思うように進まなかった大きな一因と言えるだろう。
こうした知見流出と導入の壁を打ち破るべく、地域の“内側”から新たなアプローチが動き出した。岐阜県飛騨市で地域商社を展開する株式会社ヒダカラは、2026年8月1日、社内ベンチャー第1号として「地域AI推進室」を本格始動させた。1,000社超の生産者と対話してきた関係性を活かし、自社で3カ月使い込んだ実践知を地域へ還元。「顔が見える距離での伴走」による自走モデルが、地方創生における新たな処方箋となろうとしている。(文=JapanStep編集部)
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(引用元:PR TIMES)
ヒダカラが立ち上げた「地域AI推進室」は、地域の事業者や自治体を対象に、IT導入支援、AI活用コンサルティング、人材教育の3本柱でAI活用の伴走支援を提供する組織だ。
背景には、地方企業における深刻な情報不足がある。中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」では、中小企業の83.3%が「成功事例や活用事例の情報が十分に得られていない」と回答。AIの必要性は感じつつも、身近に参考にできる事例や相談相手がいない現状が浮き彫りとなっている。
(引用元:PR TIMES)
この課題に対し、ヒダカラが掲げたのが「社外にある、うちのAI推進室」という位置づけだ。ふるさと納税の中間支援などで1,000社を超える地域の事業者や自治体と向き合ってきた経験を基盤に、現場の曖昧な悩みをAIへ伝わる指示へと翻訳。地元で直接顔を合わせて相談できる距離感を強みに、長期的な定着までを伴走する。
また、本事業が社員2人の提案から生まれ、自社で3カ月使い込むプロセスを経て形作られた点も特徴だ。全社員対象のAI活用アンケートやデータ整備を自ら実践し、資料作成などの定型業務をAIに委ねることで、対話や企画といった「人にしかできない業務」の時間を作り出した。自社の試行錯誤で得た手触りのある知見をそのまま提供することで、机上の空論ではない実践的な支援を展開している。
ヒダカラの取り組みで着目したいのが、地方におけるAI導入の成否を分けるのは「最新ツールの導入」ではなく、「地域の中に知見を残し続ける自走の仕組み」であることを示している点だ。
従来の地方DXでは、外部コンサルタントへ過度に依存し、契約終了とともにノウハウが地域外へ流出してしまうケースが見られた。また、外部から完成品を導入するだけでは現場に定着せず、形骸化するリスクも高い。その点、地域に根を張る事業者がハブとなり、自ら実践した運用知見を共有するアプローチは、成功事例だけでなく失敗の教訓をも地域固有の資産として蓄積する土台となっているだろう。
AI活用の力点を単なる「人減らしによる効率化」に置くのではなく、「人にしかできない対話や現場の仕事に割く時間を生み出すこと」に見出している点も重要だ。相手と顔を合わせる対話や、現場を見る目利きといった「人ならではの強み」を活かす道具としてAIを使う。この姿勢は、デジタル化を急ぐあまり顧客との対話や信頼関係がおろそかになることを懸念する事業者にとって、進むべき方向を示す確かなヒントとなるはずだ。
地域の未来を、地域自らの手で決定できる状態を保つこと。ヒダカラが提示した地域密着型のAI推進モデルは、都市部への知見依存から抜け出し、地方が自律的な活力を維持し続けるための指針となることが期待される。
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