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2026.10.15

地域資源の再発見装置!ARG周遊謎の可能性 【連載】「ARG」が紡ぐ、新たなPRのカタチ(第4回)

体験型エンタテインメント、ARG(Alternate Reality Game:代替現実ゲーム)の魅力と可能性を探る当連載。今回は、地域を巡りながら謎を解く「周遊謎解き=周遊謎」にARGの物語性や考察体験を掛け合わせることの可能性を紹介する。参加者が手がかりから仮説を立て、現地で確かめる「考察型ARG周遊謎」が、まだ知られていない歴史や場所を再発見する装置になり得るのか。(リード・編集=JapanStep編集部、寄稿=MARGINE 吉野さん)

ご寄稿いただいたのは

環境ミステリーレーベル MARGINE
合同会社 未来アクセラレート 代表 
吉野 渉さん

地域とARGの連携を掲げ、ARGの企画・制作に取り組む。『Project:;COLD』との出会いをきっかけにARGに魅了され、自らもARG制作に乗り出す。現在はARGレーベル「MARGINE」を通じて、地域とARGをつなぐ取り組みを進めている。JapanStepのコラム「ARGの基礎知識」でもARGをわかりやすく解説。

こんにちは、MARGINEの吉野です。

今回は、いつもより少し正直な回にさせてください。これからお話しするのは、完成された成功法則ではありません。私自身が「これは面白いことになりそうだ」と手応えを感じながら、まさにいま試している最中の、一つの可能性についてです。

テーマは、ARGと「周遊謎解き」を掛け合わせること。この二つが出会ったとき、地域のPRにどんな新しい扉が開くのか、というお話です。

「周遊謎」とは、参加者が謎解きキットを手に、特定のエリア内を実際に巡りながら手がかりを集め、問題を解き進めていく体験型コンテンツです。

たとえば、名古屋市にある鶴舞公園のリアル謎解きゲーム「クローバーの国とトランプの魔法」。公園内の施設でキットを購入して園内を歩き、各所の謎に挑み、ゴールを目指します。こうした謎解き型の周遊謎は、巡る場所に合わせて問題や演出を置き換えやすく、基本の仕組みを別の地域でも展開しやすい点が大きな特徴です。

▼練習問題(引用:「クローバーの国とトランプの魔法」公式サイト)

周遊謎解きは、すでに一つの完成形に達している

まず、いまの周遊謎解きについて。

町なかにいくつかのポイントを設け、それぞれで謎を解きながらめぐっていく。すべて解き終えると、一つのゴールにたどり着く。よくできた仕組みです。

家族や友人と歩けて、達成感があり、その土地を回るきっかけにもなる。定番になったのには、ちゃんと理由があります。

この「ポイントをめぐって、謎を解く」という形は、いわば一つの完成形です。私はこれを否定するつもりはまったくありません。ただ、これはこれで完結しているぶん、その先に何があるのかは、あまり問われてこなかったようにも思います。

ARGでは、地域そのものが「主役」になれる

そこで、ARGです。この連載で繰り返しお話ししてきたように、ARGは物語と現実を地続きにする手法です。プレイヤーは、用意された謎を解く「お客さん」ではなく、物語の世界に入り込む「当事者」になります。

この性質を周遊謎解きに持ち込むと、何が変わるか。

私は、主役が入れ替わると考えています。

ふつうの周遊謎解きでは、主役は「謎」です。土地は、謎を置くための背景になりがちです。けれどARGでは、その土地そのもの、その地域の歴史や風景や成り立ちが、物語の主役になれる。謎は、土地を語るための手段の側に回るのです。

地域が主役になる、というこの一点に、私は大きな可能性を感じています。そしてここは、まだあまり本格的に踏み込んでいない領域です。だからこそ、アイデア次第でいくらでも新しいことができる。手探りではありますが、これほどわくわくする余白も、なかなかありません。

同じ謎を前にしても、価値の「重心」が違う

私の仮説――ARG周遊謎は「考察型」と相性がいい

では、地域を主役にするために、どんな設計が向いているのか。いま私が立てている仮説は、「考察型」との相性がいいのではないか、というものです。

ふつうの周遊謎解きは、「回って、解く」体験です。順番にポイントを訪れ、その場の謎を解いて、次へ進む。これに対して考察型は、「考えて、確かめに行く」体験です。プレイヤーはまず、与えられた手がかりから「答えはどこにあるのか」を自分の頭で推理する。仮説を立てる。そのうえで、それを確かめるために実際に足を運ぶ。

この違いは、思っている以上に大きいと感じています。「回って解く」では、歩くことと考えることが分かれがちです。移動は、次の謎までの移動でしかない。けれど考察型では、歩き出す前に、もう頭が動いています。

プレイヤーは自分の仮説を胸に、その正否を確かめに土地を歩く。すると、移動そのものが「検証の旅」になる。同じ道を歩いても、意味がまるで違ってきます。

そして考察型は、地域を主役にするのにも向いています。「仮説・検証」するということは、その土地の地形や歴史や言い伝えを、手がかりとして読み込ませるということです。プレイヤーは謎を解くつもりで、いつのまにか、その地域そのものを深く知っていく。ここに、私はいちばんの可能性を感じています。

2つの周遊謎、その「進み方」の違い

考察型ARG周遊謎を形に

この仮説を、実際に形にしてみたのが、MARGINEが今秋リリースするARG「幻の鐘を巡る旅」です。ある土地に、かつて確かに存在したとされる、いまは失われた鐘。プレイヤーは、その「幻の鐘」がいったいどこにあったのかを考察するところから始めます。

高い場所にあったのではないか。町の中心だったのではないか。手がかりをもとに仮説を立て、実際にその土地を巡り、確かめていく。そして最後に、幻の鐘の在りかを自らの手で見つけ出す。これが物語の構造です。ここでプレイヤーがしているのは、スタンプを集めることでも、置かれた謎を順番に解くことでもありません。土地の成り立ちを読み解き、失われたものの居場所を推理し、その答えを確かめに歩く――まさに考察型の体験です。

鐘の在りかがどこだったのか、その答えはここでは伏せておきます。ただ一つ言えるのは、その答えにたどり着いたとき、プレイヤーの中には、ただ謎が解けた以上のものが残るはずだ、ということです。これまで名前も知らなかった土地の一角が、自分にとって意味のある場所に変わる。地域資源の再発見とは、こういうことなのだと思います。

「地域資源の再発見装置」という可能性

観光名所として知られた場所は、放っておいても人が訪れます。けれど、その土地には、まだ光の当たっていない場所や物語が、必ず眠っています。地元の人ですら忘れかけているような、小さな史跡や言い伝え。そういうものにこそ、私は惹かれます。

ARGと考察型を掛け合わせた周遊謎は、そうした「まだ知られていない地域資源」を、もう一度光の当たる場所へ引き出す装置になれるのではないか。プレイヤーは謎を解くために、その眠っていた資源を自分の足で発見する。発見した場所は、その人にとって忘れられない場所になる。そしてSNSなどを通じて、次の誰かへとつながっていく。これは、大がかりな開発や大きな予算がなくても始められる、地域の魅力の掘り起こし方だと考えています。

私はこの、考察を軸にしたARGの周遊謎を、「考察型ARG周遊謎」と呼んでいます。まだ生まれたばかりの、名前をつけたばかりの試みです。だからこそ、これから多くの余白があります。

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