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2025.12.16

小学4年生が拓く、JAXA認証宇宙食への道【連載】NEXT GEN 原石たちの挑戦

日本を共創でステップさせるためには、若き挑戦者たちの発想と行動力にこそ学びがあると考え、活躍する若い世代の実践を取材し、未来への手がかりを探る連載「NEXT GEN 原石たちの挑戦」
今回ご紹介するのは、宇宙日本食の開発プロジェクト「一般社団法人チームゆら」の代表を務める増田結桜(ゆら)さん(以下、結桜さん)小学4年生で宇宙食の研究に着手し、その後は大学生や社会人を巻き込みチームを立ち上げ、クラウドファンディングでは約500万円の目標金額を達成。静岡県産みかんを使った「宇宙日本食ゼリー」の開発を実現した。2027年頃のJAXA認証を目指して活動する、結桜さんの変遷をたどる。(文=JapanStep編集部)

お話をうかがったのは

一般社団法人チームゆら 理事
増田結桜さん

「幼少期は宇宙と無縁で、ごく普通の子どもでした」という結桜さん。宇宙に関心を抱いたのは小学校4年生の頃。きっかけは、塾(探究学舎)で受講した宇宙の授業だった。「宇宙はまだ5%しか謎が見つかっていない。多くの探査機が打ち上がっているにもかかわらず、なお未知の領域が広がっている。その状況にロマンを感じました」(結桜さん)。

以降、宇宙に関する書籍を次々と読み進めるなかで、運命的な一冊『宇宙のがっこう』と出会う。同署に登場するJAXAの宇宙食開発に携わる須永 彩さんの言葉が、結桜さんの心を大きく揺さぶった。

「宇宙食の仕事は、宇宙飛行士に元気と笑顔を届けられる仕事です」

この言葉に深く感動し、「静岡県の美味しい食材をISSで頑張る宇宙飛行士に届けたい」という思いが芽生える。そこから結桜さんは、「宇宙日本食」の開発に取り組む決意を固めた。

※「宇宙日本食」=JAXAの認証を経た宇宙食のこと。ISS(国際宇宙ステーション)に滞在する日本人が故郷の味を楽しむために、馴染みのあるカップ麺やカレーなど約50品目が名を連ねている。

350食以上の試作。挑んだ「宇宙品質」への壁

そこからは試作品の開発に没頭する日々が続いた。最初の着手は、静岡県民に馴染み深い「静岡おでん」であったが、市販の具材にとろみを加えただけでは「自分で作っている感がない」と再スタート。食材の選定から試行錯誤すべく、学校の長期休暇も費やし、試作品を作り続けた。

最終的に到達した答えが、地元のみかんを用いた「静岡みかんゼリー」である。宇宙食では珍しいデザート系であるうえ、ビタミンCやβクリプトキサンチンといった免疫機能の維持に寄与する成分を多く含むことから、栄養面でも宇宙食として期待ができると考えた。 

自宅のキッチンで始めた試作品は350食を超えた

ここから、技術上の課題と本格的に向き合うことに。第一に求められたのは、粘度と味の最適化だ。 ISS内では水分の飛散が機械故障の要因となるため、食品には一定の粘度(とろみ)が不可欠である。また味覚や嗅覚が鈍くなる宇宙の環境特性を踏まえ、地上よりも濃い味付けが求められる。

そこで宇宙日本食「サバ醤油味付け缶詰」を開発した福井県立若狭高校にアポイントを取る。アドバイスを得てくず粉の使用を試したが、和食であるサバ缶と異なり、甘味を主体とするデザートとは相性が合わない。ほか適切な凝固剤の探索は続いたが、寒天は食感が硬すぎ、ゼラチンは柔らかすぎるなど、理想の食感にはなかなか近づかなかった。

さらに、「熱殺菌」という宇宙食製造に必須の工程も大きな壁となった。認証には製造工場の立ち入り検査が伴い、個人での取り組みには限界が生じる。そこで小学5年生の春休みを利用し、地元静岡県で宇宙日本食を手がける石田缶詰に訪問。宇宙日本食認証への道のりや資金面の苦労などを伺った。

たまたま持参した試作品の静岡みかんゼリーのパウチ(熱殺菌)で実施をしてもらい、「数日後にゼリーとして品質が保たれているか試食してみなさい」との助言を受けた。しかし数日後、パウチを開封すると、ゼリーは常温で粘度を維持できず、液状化してしまっていた。

この経験から、熱に強い「クールアガー」を凝固剤として採用する方針を固め、同時にビタミンCやクエン酸の調整を繰り返しながら、風味の最適化を図った。

試作回数はこの時点は350食を超え、開発は着実に深化していった。

凝固剤の試作風景

若き挑戦を支えた大学生と地域の力

企業側からは「小学生個人との継続的な協力は難しい。公共団体との連携、もしくは学生との組織化が望ましい」と現実的な助言が寄せられた。結桜さんは、この取り組みを一過性の夢で終わらせないためにも、大学生を巻き込み体制を整える方針へと舵を切った。

静岡市内のコミュニケーションスペースを運営する社会人と大学生に協力いただき、チームメンバーを募集。自ら説明会で活動の紹介をしたところ、理念に共感した大学生が集まり、任意団体としての活動が始動した。

しかしその後、JAXAからは「任意団体ではなく法人格が必要」との指摘が入り、加えて本格的な製造(OEM)には相当の資金を要することが明らかとなる。結桜さんは「一般社団法人チームゆら」を設立。チームゆらのメンバーをはじめ、多くの方々のアドバイスと協力を得ながら資金計画を整えていった。

「チームゆら」結成時。結桜さんと、熱量に惹かれて集まった大学生のメンバー

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