自治体からの「お知らせ」は、果たしてどこまで住民に届いているのだろうか。広報紙や文字主体のホームページ。それらはこれまで、限られた職員の懸命な努力によって支えられてきた。しかし、住民の情報接触経路が動画やSNSへ劇的に移行した今日、従来型の発信モデルでは到達率・理解度ともに限界が見え始めている。
2026年2月、渋谷のAIスタートアップであるカスタマークラウド株式会社が本格化させた自治体向け広報DX支援は、この「伝える」と「伝わる」の溝をテクノロジーで埋めようとする試みだ。AIアバターが行政のメッセージを代弁し、親しみやすい動画で住民へ直接届ける。それは、人口減少に立ち向かう日本の自治体が手にする新しい対話の武器である。(文=JapanStep編集部)

(引用元:PR TIMES )
カスタマークラウドが提供を開始したソリューションの核心は、行政広報のプロセスを一気通貫でデジタル化する点にある。生成AIによる原稿作成から、AIアバターを用いた動画化、さらには多言語展開や複数チャネルへの同時配信までを自動化する仕組みだ。
この取り組みがもたらす最大の恩恵は、情報の「標準化」と「即時性」である。これまでの行政広報は、担当職員の編集スキルやITリテラシーに依存する側面が強かった。しかし、AIを活用することで、誰が担当しても正確で分かりやすい情報を均質なクオリティで発信できるようになる。
特にその真価が発揮されるのが、防災情報や急な制度変更の告知といった一分一秒を争う場面だ。文字情報を入力するだけで、AIアバターを用いた解説動画が即座に生成され、住民のスマートフォンに届く。このスピード感は、これまでの行政運営では考えられなかったものだ。
(引用元:PR TIMES )
富山県南砺(なんと)市の田中 幹夫 市長がAI動画を用いた年頭所感の発信に挑戦したように、先進的な首長たちの間では、すでに「自分たちの言葉をどう届けるか」という課題に対し、AIを戦略的に取り入れる動きが始まっている。
今回の広報DXが示唆しているのは、地方自治における「DXの第2段階」への移行だ。
これまでの自治体DXは、基幹システムの刷新やオンライン申請の導入など、主に組織内部の業務効率化、いわば「バックエンド」の改革が中心だった。しかし、住民が行政の進化を真に体感するのは、情報の受け取り方や相談のしやすさといった「フロントエンド(接点)」の変化にある。インターフェースをAIで再構築することは、行政をより身近な存在へと変え、政策理解の向上や行政参加の促進に直結する。
また、これは深刻な人材不足に直面する地方自治体にとって、経営の持続可能性を確保するためのインフラ整備でもある。広報の制作負荷をAIが肩代わりすることで、職員は対面での窓口業務や複雑な相談対応など、「人間にしかできない直接的な住民支援」に注力できるようになる。テクノロジーによって生まれた余白が、行政サービスの質そのものを高めるという好循環だ。
「行政は変わりにくい」というかつての常識は、いまや過去のものとなりつつある。AIアバターという新しい社会インフラは、行政のメッセージをより均質に、より優しく住民へ届けるための「温かい声」となるだろう。内部の効率化から、住民接点の構造改革へ。カスタマークラウドの挑戦は、人口減少社会における「強い自治体」の姿を、広報という側面から鮮明に描き出している。