「DX」という言葉が広く浸透し、デジタル化への取り組みが当たり前となった2026年の春。都心のオフィスから地方の町工場まで、その言葉を知らない経営者はもはや少数派だ。しかし、「あなたの会社にとってのDXとは何か」を問うと、明確に答えられる企業はまだ少ない。多くの現場では、便利なITツールの導入が目的化し、その先にあるはずの「変革」への道筋は依然として見えにくいままだ。
株式会社フォーバルが発表した最新のレポートは、日本経済を支える中小企業が直面する、こうした構造的な「停滞」を浮き彫りにした。言葉だけが先行し、実態が伴わないジレンマ。それでも9割を超える企業が「前へ進む」と答えるその熱量を、いかにして本物の成長へと繋ぎ止めるべきか。日本の活力を再起動させるための新たな挑戦の現在地を追う。(文=JapanStep編集部)

(引用元:PR TIMES)
株式会社フォーバルが運営するフォーバル GDXリサーチ研究所が発行した「BLUE REPORT 3月号」の調査結果では、中小企業におけるDXの理想と現実の乖離が明らかになっている。
まず、DXの認知度について、「知っており、他の人に説明できる」(17.1%)と「知っているが、説明できるほどではない」(43.7%)を合わせ、約6割の企業がDXという言葉を認識していることが分かった。しかしこの結果は、自社の言葉でDXを定義し、他者に説明できるレベルまで理解を深めている経営者は全体のわずか2割にも満たないことをも示している。さらに、前年同時期の調査で「DXを説明できる」と回答した企業の割合(19.3%)と比較しても微減している。DXという概念が浸透しつつも、理解の質においては「足踏み」の状態が続いていることが浮き彫りとなった。
(引用元:PR TIMES)
取り組みの状況を見ても、その停滞感は否めない。DXに取り組んでいると回答した63.0%の企業のうち、その半数以上(36.3%)は、デジタル化に向けた「意識改革(ステップ1)」の段階にとどまっている。データ利活用による「情報活用(ステップ2)」に到達しているのは21.2%、さらにその先の事業戦略の再構築や新規事業創出といった「事業改革(ステップ3)」まで踏み込めている企業は、わずか5.5%に過ぎない。
(引用元:PR TIMES)
一方で、注目すべきは経営者の「意欲」だ。DXに取り組んでいる企業に対して今後の推進意思を問うたところ、「大幅に注力する」や「現状を維持する」を含め、実に94.7%が推進を継続する意向を示している。
(引用元:PR TIMES)
中小企業の現場には「今のままではいけない」という強い危機感と、テクノロジーへの期待が広がっている。しかし、その意欲を具体的な成果へと変換するための「地図」を、多くの経営者が描き切れていないのが2026年現在の実情だ。
この白書が突きつけたのは、DXを「ITツールの導入」と混同している限り、中小企業の挑戦は真の実利を生み出さないという厳しい現実だ。
多くの経営者が「他人に説明できない」理由は、DXを経営戦略としてではなく、単なる事務効率化の手段として捉えている点にある。本来のDXとは、経営者が自社の10年後、20年後の未来像を自らの言葉で描き、その実現のためにデータや技術をどう配置するかを決定する「構造の変革」に他ならない。経営者が、自社のためのDXを自らの言葉で「語れる」ようになること。それこそが、限られた経営資源をどこに投下すべきかを明確にし、企業の生存率を劇的に引き上げる唯一の道となる。
一方で、94.7%という圧倒的な推進意思は、日本経済にとって大きな希望だ。この膨大な熱量を、ステップ1の「意識改革」で終わらせてはならない。中小企業に求められているのは、単なる「ペーパーレス」や「システムの導入」を卒業し、自社の強みをデジタルで研ぎ澄ませる「攻めの戦略」への転換だ。そのためには、経営者の想いを技術的なロードマップへと翻訳し、伴走する外部パートナーの存在も不可欠となるだろう。
日本のDXは単に言葉だけを「知っている」段階を終え、いかに「使い倒すか」という実戦のフェーズに突入した。フォーバルのレポートが示す足踏みの現状は、裏を返せば、正しい戦略さえ手に入れれば爆発的に成長できる可能性を持った中小企業が、全国に数多く眠っていることを意味している。経営者の一人ひとりが、自社の技術やサービスがデジタルによってどう進化するかを自らの言葉で語り始めたとき、日本経済の再起動は本物になる。中小企業の挑戦が「説明可能な成功」へと変わる時、この国は再び世界を驚かせる強靭さを取り戻すに違いない。