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2026.04.27

未来への「地固め」を! 全国規模のインフラ老朽化を乗り越える「工程一体化DXモデル」

道路、橋、下水管。高度経済成長期に一気に整備され、私たちの豊かな生活を根底で支えてきた「社会の血管」とも呼べるインフラが、しかし老朽化の進行により全国各地で限界を迎えつつある。特に下水道管路は、地下にあるがゆえに点検作業が危険かつ難しく、人手不足も重なり維持管理のサイクルが分断されがちだった。
日本の未来をステップアップさせるには、社会基盤という足元をテクノロジーの力で効率的かつ強靭に固め直すことが不可欠だ。産官の垣根を越えた異業種のスペシャリストたちが集い、下水道の維持管理プロセスを一気通貫で変革する新たな挑戦が、埼玉県から始動した。(文=JapanStep編集部)

分断を繋ぐ「工程一体化」。8者による共創

2026年3月10日、埼玉県と埼玉県下水道公社、そして通信インフラを牽引するNTT東日本を代表とする民間事業者6社の計8者は、下水道管路マネジメントシステムの共同研究に関する協定を締結した。

(引用元:PR TIMES

取り組みの核となるのは、これまで専門性や実施主体ごとにバラバラだった点検・調査、解析、補修、情報管理といったプロセスを、デジタル技術でシームレスに繋ぐ「工程一体化DXモデル」の構築である。

背景には、2025年1月に埼玉県八潮市で発生した、老朽化した下水道管に起因する道路陥没事故がある。事故を契機に、従来手法による点検の難しさや、関係者間の情報共有の課題が浮き彫りとなった。

(引用元:PR TIMES

これに対し、共同研究体は各社の最先端テクノロジーを持ち寄ることで解決を図る。例えば、人が立ち入れない危険な管路内を、専用ドローンが安全に飛行して3Dデータ化し、AIがひび割れなどの異常を自動で検知。取得されたデータは管理ツールを用いて地図上に統合、3次元化して可視化される。


(引用元:PR TIMES

さらに補修が必要となれば、長距離圧送が可能な吹付け工法や、特殊塗料を用いた強靭化技術により、短期間かつ省人化された施工が直ちに行われる体制が組まれている。

このように専門技術を持つ各企業が連携し、各工程のデータを分断させることなく一連のフローとして統合することで、異常の早期発見から予防保全への転換が可能に。限られた人員でも安全かつ持続可能なインフラ管理が実現するのだ。

これは前進するための「地固め」。強靭な国土の基盤をつくる

この共同研究が示唆しているのは、インフラ老朽化という日本が直面する巨大な課題に対する、戦略的なアプローチの転換だ。

日本のインフラは現在、多くが建設から数十年を経過しており、全国規模での修繕や更新が待ったなしの状況にある。これらの対応を単なるコストや、維持のための「防衛戦」と見なすのではなく、次なる成長へ向けた「地固め」として捉え直す視点が極めて重要だ。新しい産業を興し、世界と戦うための高度な社会活動を展開するには、人々の安全と安心を担保するインフラという土台が揺るぎないものでなければならない。

本プロジェクトが目指す「工程一体化DXモデル」は、まさにその土台をテクノロジーによって効率よく、かつ強固に再構築する試みだ。危険な現場作業をドローンやAIが代替し、分散していたノウハウがクラウド上で統合される。これにより、年間約1.1兆円規模とされる下水道維持管理市場は、労働集約型の作業から、データ駆動型のスマートな産業へと生まれ変わる可能性が高い。

埼玉県という実証フィールドで培われたこの運用モデルは、やがて全国の自治体へと横展開され、日本全体の社会インフラを持続可能なものへとアップデートしていくはずだ。

地方から始まる官民共創の取り組みは、決して後ろ向きな補修作業ではない。テクノロジーを駆使して国土の基盤を最新の状態へと整え直すこと。それこそが、日本が再び力強くステップアップし、未来を切り拓くための重要な第一歩となるだろう。