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2026.06.01

空飛ぶクルマに「つながり続ける」技術を【連載】未来をつなぐ、スプリングコネクタ (第4回:モビリティ編)

あらゆる電子機器に使われるコネクタ。その中でもバネ(コイルスプリング)を内蔵する「スプリングコネクタ」の技術にフォーカスを当て、各分野での活用法を学ぶ当連載。今回紹介するのはモビリティ分野。その中でも、長年人類が空想に描いてきた「空飛ぶクルマ」をメインに、普段見えにくいコネクタの重要性を学んでいく。(リード文・編集=JapanStep編集部、本文=株式会社ヨコオ)

※スプリングコネクタの基礎知識は「社会を支える小さなチカラ~【連載】未来をつなぐ、スプリングコネクタ (第1回:基礎編)を参照

株式会社ヨコオ

1922年創業・1951年設立の電子部品メーカー。主に車載用アンテナや半導体回路検査用コネクタ、医療用微細精密部品などを開発・製造し、業界をリードする技術力とグローバル生産体制を持つ。

世界各地で実証飛行が進み、制度やインフラ整備も含めて、社会実装を見据えた取り組みが本格化してきた「空飛ぶクルマ」。
その進化を語るとき、プロペラや機体デザイン、制御ソフトウェアといった目に見える技術に注目が集まりがちです。
しかし実際には、機体内部で電気と情報を「確実につなぎ続ける」技術も、同じくらい重要な役割を担っています。今回は、その中でもSPRING CONNECTOR™(以下、スプリングコネクタ)に焦点を当て、空飛ぶクルマとの関わりを見ていきます。

万博で示された、空飛ぶクルマの“現実味”

空飛ぶクルマは、一般に eVTOL(イーブイトール、Electric Vertical Take-Off and Landing) と呼ばれます。電動で垂直に離着陸できる次世代航空機で、滑走路を必要としない点が大きな特徴です。
また電動化によって騒音や振動が抑えられ、排出ガスを出さないという環境面での利点もあります。そのため、都市部の短距離移動や空港アクセス、交通渋滞の緩和といった用途に加え、離島や中山間地域の移動手段、災害時の人命救助や物資輸送など、幅広い活用が期待されています。
「空を使うことで、地上交通の制約を受けない」――これが、eVTOLが次世代モビリティとして注目されている理由です。

2025年に開催された大阪・関西万博では、空飛ぶクルマ(eVTOL)が未来社会ショーケースの一つとして紹介されました。会場には専用の離着陸施設「バーティポート」が整備され、実機展示やデモ飛行が行われました。

実際に飛行する姿を一般来場者が目にしたことで、空飛ぶクルマは「コンセプト」ではなく、「社会実装が近づいている技術」であることが強く印象づけられました。万博は、eVTOLが研究段階から実用段階へ移行しつつあることを示す、大きな転換点となったと言えるでしょう。

(大阪・関西万博の上空を飛行するeVTOL 写真提供:Joby Aviation. (c) Joby Aero, Inc.)

電気で飛ぶ乗り物には、接続技術が不可欠

空飛ぶクルマは、エンジンではなく電気で飛行します。そのため、機体内部にはバッテリー、モーター、制御装置、センサーなど、多くの電気部品が搭載され、それらを結ぶ「接点」が無数に存在します。
特に重要なのが、電源と通信を同時に担う接続部です。電力が安定して供給されること、そして制御信号やデータが正確に伝わり続けることは、飛行安全そのものに直結します。

大阪・関西万博で使用されたeVTOL機体の一例として、米国のJoby Aviation社が開発を進める機体があります。この機体では、モジュール式の通信・電源接続インターフェースの接点に「スプリングコネクタ」が採用されています。 

この接続部は、操縦系・制御系モジュールと機体系をつなぐ集中型のコネクタ部にあたります。電力と高速通信を一体で接続できる構造となっており、機体内部の限られたスペースの中で、高密度かつ高信頼な接続が求められる領域です。
(eVTOLのモジュール交換部 写真提供:Joby Aviation. (c) Joby Aero, Inc.)

振動の中でも「つながり続ける」理由

eVTOLの機体は、飛行中だけでなく地上にいる間も、常に振動や微小な位置ズレが発生する環境に置かれています。プロペラやモーターによる連続的な振動、離着陸時の衝撃、軽量化のための構造的なたわみ――こうした条件は、接点にとって非常に厳しいものです。

スプリングコネクタは、ばねの力によって常に一定の接触圧を維持できる構造を持っています。そのため、振動やズレが生じても接点が相手側の電極に追従し、安定した接触状態を保つことができます。これにより、通信の瞬断や接触不良を防ぎながら、安定した通信と制御を実現します。

(資料提供:ヨコオ)

この接続部では、電力を供給するだけでなく、高速通信規格「Ethernet(イーサネット)」によるデータ通信や、各機器を動かすための制御信号もやり取りされています。このEthernetは、もともとパソコンやサーバーをネットワーク接続するために使われてきた通信技術ですが、近年では自動車や航空分野でも活用が進んでいます。

中でも「100BASE-T1」や「1000BASE-T1」は、車載用途向けに開発された規格。将来的には、「2.5GBASE-T1」と呼ばれる、最大2.5Gbps級のさらに高速な通信規格への対応も想定されています。

これは、高精細カメラ映像や機体状態のリアルタイム監視、AIによる自律飛行制御など、空飛ぶクルマに求められるデータ量が今後さらに増加していくことを見据えたものです。こうした高速通信への対応は、単なる“配線部品”ではなく、機体の知能化・高度化を支える重要なインフラ技術と言えるでしょう。

「飛べる」から「使われる」乗り物へ

空飛ぶクルマが社会に定着するためには、「飛べること」だけでは不十分です。継続的に運航でき、整備しやすく、日常の移動手段として使われることが求められます。
そのためには、安全性や認証制度に加え、機体を構成する一つひとつの部品が、長期にわたって安定して機能し続けることが欠かせません。スプリングコネクタも、そうした要素技術の一つです。

これまでスプリングコネクタは、「振動のある環境でも機械的に安定してつながる部品」として価値を発揮してきました。しかし、空飛ぶクルマが実証段階から量産・運航フェーズへ進むにつれ、その役割は変化していきます。

今後求められるのは、単に接続するだけでなく、接続状態を把握できるインターフェースとしての役割です。つまり、スプリングコネクタは「特殊用途の部品」から、「次世代モビリティにおける標準的な接続技術」へと進化していく必要があります。

振動追従性、繰り返し着脱できる構造、冗長設計との親和性といった特長は、eVTOLの量産や日常的な運航、定期整備を支えるうえで、これまで以上に重要になります。スプリングコネクタは、空飛ぶクルマの普及を陰で支える存在として、その役割を広げていくでしょう。


耐衝撃SPRING CONNECTOR™

空飛ぶクルマが空を行き交う未来。その実現の裏側には、目立たないけれど欠かせない技術があります。
「つながり続ける」ことを支える部品技術もまた、次世代モビリティの重要な一部なのです。
「スプリングコネクタ」は、その使命の一端を担い、さらなる進化の道をたゆまず歩み続けていきます。

※本記事の内容および掲載画像は、Joby Aviation, Inc. の許可を得て掲載しています。
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※SPRING CONNECTOR™は株式会社ヨコオの登録商標です。