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2026.09.02

煙や停電もリアルに再現。コクヨの防災訓練はバーチャルで

在宅勤務と出社を組み合わせる働き方が定着した一方で、企業の防災現場には見えない死角が生じている。フリーアドレス化により誰がどこにいるか把握しにくくなり、従来の集合型避難訓練は参加率の低下に悩まされてきた。この現代的な課題に対し、エンターテインメントの世界で磨かれた技術を用いて、職場の安全を再構築する試みが始まった。ゲーム制作の知見が日本の働く現場をどう守り抜くのか、その可能性を捉える。(文=JapanStep編集部)

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見慣れたオフィスを再現。ゲームエンジンで防災DX

2026年6月、XR技術を活用した開発を手掛ける株式会社マンカインドゲームズは、文具・オフィス家具大手のコクヨ株式会社と共同でバーチャル防災訓練システムを開発し、コクヨの東京品川オフィス「THE CAMPUS」へ導入したと発表した。

(引用元:PR TIMES

コクヨでは、社員が働く場所を自由に選ぶABWの推進に伴い、出社率のばらつきやフリーアドレス化が進んでいた。その結果、消防法で義務付けられた自衛消防組織の担当者が有事の際に不在となるリスクが高まり、全員を集める従来の避難訓練の実施が困難になるという課題を抱えていた。

(引用元:PR TIMES

両社が約3カ月かけて構築したシステムは、普段見慣れた品川オフィスを3Dスキャンで緻密に再現し、既存のパソコン上で動作する。大きな特長は、リアルな訓練では危険を伴う停電や煙の充満、さらには防火シャッターが下りて平時の避難ルートが塞がれた状態など、実際の災害時にしか発生しない過酷な状況を安全に体験できる点にある。

(引用元:PR TIMES

専用のハードウエアを必要としないため、在宅勤務中の社員であっても自宅から訓練に参加することが可能だ。同年5月末には新入・中途社員を対象としたハイブリッド避難訓練が実施され、東京消防庁の視察も行われた。ゲーム開発で培われた空間表現力と、東京消防庁との共同開発で得たノウハウが結集し、企業の防災体制を実効性の高いものへと刷新している。

エンタメ技術が社会を支える。スタートアップと大企業の共創

今回の取り組みは、単なる避難訓練のデジタル化にとどまらず、エンターテインメント領域で培われた高度な技術が、日本企業の安全基盤を直接的に強化する手段となり得ることを明確に示している。
長年、ゲームエンジンや3D空間生成といった技術は、主に娯楽の文脈で発展してきた。しかし、現実世界をミリ単位でデジタル上に再現できるその描写力とシミュレーション能力は、複雑化する社会課題を解決するための強力な武器となる。現実ではコストや安全上の理由から実施できない最悪のシナリオを仮想空間で何度でも再現し、全社員が当事者意識を持って体験できる環境は、従来の紙のマニュアルや一形式的な避難訓練では決して得られない価値だ。
さらに重要なのは、柔軟な発想を持つ技術系スタートアップと、自社の働き方改革を推進する大企業がタッグを組み、現場の課題に即したソリューションを作り上げたプロセスである。大企業の持つリアルなオフィス空間と運用の課題に対して、スタートアップの持つスピード感あふれる開発力が組み合わさることで、実効性の高いシステムが短期間で結実した。こうした共創の形こそが、停滞しがちな日本の大企業にイノベーションを巻き起こす原動力となるだろう。
今後はオフィスにとどまらず、製造工場や大規模な物流倉庫、商業施設など、より避難経路が複雑な現場への展開も期待されている。
娯楽の領域で磨かれた日本のクリエイティブな技術が、働く人々の命を守る堅牢なインフラへと姿を変えていく。時代に合わせた働き方の進化とともに、防災のあり方もまたアップデートされていく。先進的なテクノロジーと企業の共創が、日本の社会全体をより安全でしなやかな構造へと塗り替えていくはずだ。

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