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2026.10.23

地域課題を、子どもたちの問いに変える。社会とつながるマインクラフト教育【連載】タツナミシュウイチが読み解く マインクラフト教育の新潮流(第4回)

皆さん、こんにちは。タツナミシュウイチです。前回は、海外の教材を取り上げ、化学や生物、宇宙、AIといったテーマが、マインクラフトの中でどのように学びへつなげられているのかをお話ししました。

今回は、日本での実践に目を移します。私がこれまで携わってきた取り組みだけでも、宇宙、歴史、平和、環境、まちづくり、土木など、扱うテーマは多岐にわたります。学校だけでなく、自治体や大学、企業と連携して進めるプロジェクトもあります。

こうした相談を受けたとき、私が最初に考えるのは「マインクラフトで何ができるか」ではありません。その地域や組織は何を伝えたいのか。子どもたちと何を一緒に考えたいのか。そのうえで、マインクラフトを使う意味を考えます。今回は、国内の具体的な事例から、地域の歴史や社会課題をどう子どもたちの学びへつなげるのかを見ていきます。さらに、そうした取り組みを一度きりで終わらせないために、何が必要なのかまで考えていきます。(解説=タツナミシュウイチ/聞き手・文=JMP総合プロデューサー 長谷川浩和)

【連載一覧】タツナミシュウイチが読み解く マインクラフト教育の新潮流

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教えてくれたのは…

Japan Crafters Union 代表/東京大学大学院 客員研究員/常葉大学 客員教授/JAXA応援団アンバサダー
タツナミシュウイチさん

2018年1月、統合版マインクラフトのマーケットプレイスでアジア初、日本初となるコンテンツ作品をリリース。その後、ゲーム教育を軸に制作や研究開発に取り組む。2021年9月、日本人で7人目となるMicrosoft Innovative Educator FELLOWの称号を授与された。『情熱大陸』(毎日放送)、『マツコの知らない世界』(TBS)、『有吉ぃぃeeeee!』(テレビ東京)など数々の地上波番組に、ゲームや教育に関する有識者として出演。教育関連書籍や子ども向け書籍の執筆・監修も多数手がける。現在も、デジタル空間をプラットフォームとした教育の研究・実践、教材開発などに取り組んでいる。

問いは、現実の側にある

自治体や企業の方から相談をいただくと、「マインクラフトでは何ができますか?」と聞かれることがあります。

私はまず、「何がしたいですか?」と聞きます。

地域の歴史を次の世代に伝えたい。地元の産業に関心を持ってほしい。環境について考える機会をつくりたい。宇宙や科学を、もっと身近に感じてもらいたい。目的が違えば、教材のつくり方も、子どもたちに投げかける問いも変わります。

マインクラフトでは、経済、歴史、環境、科学、宇宙、平和学習まで、幅広いテーマを扱えます。だからこそ、私はマインクラフトから企画を考えないようにしています。

企画の起点に置くのは、その地域や企業が抱えている課題です。それを子どもたちにどう手渡せば、自分で調べ、考え、つくってみたくなるのか。その過程でマインクラフトが生きるのであれば使う。私は、いつもそこから企画を始めています。

月面と研究現場を往復する

私がいま力を入れているテーマの一つが、宇宙です。

JAXA宇宙教育センターが公開している「LUNARCRAFT(ルナクラフト)」は、月周回衛星「かぐや」が取得したデータを基に、マインクラフト上に月面を再現した教材です。私もプロデューサーとして企画やカリキュラム設計、技術面の支援などを務めました。月面を探索しながら緻密に再現された地形や環境に触れ、そこから月探査や宇宙科学へ興味を広げていく教材です。


JAXAが2007年に打ち上げた月周回衛星「かぐや」が観測した月面の3D地形データの中から「ティオフィルスクレーター」の地形データをゲームに落とし込んでいるため「リアルな月面」を体験できる(引用:タツナミシュウイチ公式Webサイト)

ただ、宇宙の学びをデジタルの中だけで完結させたいとは思っていません。

相模原市とJAXAとの取り組みでは、3日間の「相模原宇宙キャンプ」も行いました。子どもたちはJAXAの施設で研究者から直接話を聞き、設備を見学し、博物館を訪れ、学芸員の話にも耳を傾けました。その一連のプログラムに、マインクラフトでの体験も組み込みました。

宇宙とゲームが好きな子どもたち30人が集まり、寝食をともにしながら学びました。定員30人に対して数百人の応募があり、最後には、自分たちが何を学び、何を考えてつくったのかを、子どもたち自身が大人の前で発表しました。

私がこの取り組みで大切にしているのは、現実で得た体験を、デジタル空間でもう一度捉え直すことです。研究者の話を聞き、研究の現場を自分の目で見る。そこで得た知識を持ってデジタル空間に戻り、自分なりに考え、形にしてみる。同じワールドでも、その前に何を知り、何を経験したかで、見え方が変わります。

マインクラフトは、現実の体験を代替するものではありません。むしろ、現実で知ったことをもう一度自分の手で確かめたり、組み立て直したりする場所として使える。だから私は、宇宙教育だけでなく全てのマインクラフトを活用した教材カリキュラムでは現実の体験とデジタルでの探究を組み合わせることを出来る限り大切にしています。

2026年8月、小学5年生から高校3年生を対象とする宇宙教育プログラム「さがみはら宇宙キャンプ~マインクラフトで宇宙を学ぼう~」を2泊3日で実施した(引用:タツナミシュウイチ公式Webサイト)

記録をたどり、かつての街を再現する

歴史や平和について考える場でも、マインクラフトを活用しています。

広島や長崎では、被爆の記憶を次の世代へどう受け継ぐかをテーマにした学習に関わりました。被爆を経験した方が少なくなっていく中で、残された記録や証言に子どもたちが向き合う方法の一つとして、デジタル空間を使っています。

新潟県長岡市では、空襲の歴史と、その後の復興について学ぶワークショップにも携わりました。

参加した子どもたちは、まず被爆や空襲を体験した方や地域の方の話を聞きます。写真や資料から当時の街並みや暮らしについて調べ、そのうえで教育版マインクラフトを使い、破壊されてしまう前の建物や生活を再現しました。2日目には戦後の復興について学び、NPCや黒板を使って当時の人々の気持ちや言葉を自分事化して書き込み、平和への思いを表現し、最後に各グループが制作したワールドを発表しました。

「つくる」という作業が加わると、資料の読み方が変わります。建物はどんな形をしていたのか。道路はどこを通っていたのか。その場所で、人はどんな暮らしをしていたのか。

再現しようとすれば、細部まで見なければなりません。分からなければ資料に戻る。必要なら人に聞く。歴史について説明を聞くだけではなく、自分たちで形にするために記録を読み直すわけです。

もちろん、マインクラフトの中に過去そのものを再現できるわけではありません。資料から確認できる事実と、自分たちの解釈を分けながらつくる必要があります。自分たちで形にしようとするからこそ、記録を読み込み、人の言葉にも丁寧に耳を傾ける。私は、この過程にこそ、歴史学習でマインクラフトを使う意味があると思っています。

2025年8月、新潟県長岡市主催でワークショップを実施した際の様子(引用:タツナミシュウイチ公式Webサイト)

子どもの提案が、大人の視点を変える

地域や産業と結びついたコンテストも各地で行われています。

千葉県では都市開発や建設、群馬県では道路・橋・トンネル、福井県では未来の宇宙ステーションと、地域によってテーマは異なります。群馬県の「デジタル土木コンテスト」では、地元の建設会社や自治体とも連携し、子どもたちに土木への関心を持ってもらい、将来の人材育成につなげる狙いもあります。

こうしたコンテストでは、大人の方が子どもたちの発想に驚かされることがあります。

例えばトンネルがテーマなら、大人は実際にあるトンネルを基準に考えがちです。一方、子どもたちからは、既存の形にとらわれない案が出てきます。壁を光らせたり、装飾を施したりして、通る時間そのものを楽しめるトンネルをつくる。「現実はこうなっている」ではなく、「自分ならこうしたい」から発想します。

2026年1月に群馬県主催「デジタルどぼくコンテスト2025」の表彰式に審査員長として出席した際の様子(引用:タツナミシュウイチ公式Webサイト)

それをそのまま現実の設計に採用するわけではありませんが、完成したワールドに大人が入ってみると、「こういう考え方もあるのか」と驚くことがあります。それまで当然だと思っていたものを、別の角度から見る機会にもなります。

子どもたちに地域や産業を教えるだけではなく、その提案を一つのアイデアとして受け止める。教えるつもりで始めた側が、逆に「そんな考え方があるのか」と教えられる。実際のプロジェクトでは、そんな場面が何度もあります。

社会課題を、「自分ならどうするか」に変える

環境問題は、日々の暮らしとの関係を実感しにくいテーマの一つです。

徳島県の「脱炭素・未来空間TOKUSHIMA」は、カーボンニュートラルをテーマにしたワールドです。

ワールドでは、脱炭素が進んだ社会と気候変動が深刻化した社会を比較しながら、再生可能エネルギーや省エネルギー、環境に配慮したまちづくりについて考えます。「カーボンニュートラルについて考えよう」と言われても、自分の暮らしとどう関係しているのかは、なかなか見えません。

「未来の街を自分でつくる」となると、考える対象が具体的になります。エネルギーは何を使うのか。建物はどうするのか。どんな移動手段が必要なのか。暮らしやすさと環境負荷を、どう両立させるのか。

社会課題を説明するだけでなく、子ども自身が選び、判断する場面をつくる。自治体や企業が向き合う課題を子どもたちの学びに変えるとき、私は、それを「自分ならどうするか」と考えられる問いにすることを大切にしています。

肩書を越えて、同じ課題に向き合う

マインクラフト教育は、必ずしも子どもだけを対象にしたものではありません。企業の社員研修などで使われることもあります。ベテラン社員と新人が同じグループに入り、マインクラフトの中で一つのテーマに取り組みながら話し合い、新しいサービスを考えるといった使い方もあります。

このときも、操作の上手さが目的ではありません。普段の職場では、役職や経験年数によって、発言する人や役割がある程度決まっていることがあります。ただ、マインクラフトの中では、普段の役割から少し離れて取り組むことができます。

ゲームの経験も、仕事で培ってきた知識も人によって違います。同じ課題に取り組むと、その違いが自然と表に出てきます。言葉だけでは伝えにくい考えも、実際に形にすれば、それを見ながら話し合えます。

一緒にものをつくっていると、普段の会議とは違う会話が始まります。第1回で、マインクラフトには年齢や立場を越えやすい自由があるとお話ししました。その特徴は、子どもと大人の間だけではなく、組織の中でも生かすことができます。

教育という言葉から学校だけを思い浮かべると、少し意外な使い方に見えるかもしれません。でも、誰かから答えを教わることだけが学びではありません。立場の違う人が同じ課題に向き合い、互いの考え方を知る。こうした場面を見ると、マインクラフトが組織の中で使われる理由もよく分かります。

学びを続けるには、仕組みがいる

自治体や企業との取り組みでは、「一度で終わらせない」ことを強く意識しています。子どもたちが参加して、「楽しかった」「またやりたい」と言ってくれる。それはうれしいことです。ただ、その後に学びを続ける機会がなければ、そこで生まれた興味も途切れてしまいます。

私は企業や自治体にも、単発で終わらせず、その次をどうつくるかまで一緒に考えたいとお伝えしています。「来週もやりたい。来月もやりたい。来年もやりたい」。そう思ったときに、次に挑戦できる場を残しておきたいからです。

そのため、教材を一つつくって終わるのではなく、継続的に相談を受けながらカリキュラムや教材を考え、ワークショップの設計や運営まで関わることがあります。企業が自治体や学校との間をつなぎ、それぞれが抱える課題を聞きながら、新しいプロジェクトを立ち上げるケースもあります。

私は、教育を続けていくことと、それを支える事業を成り立たせることは、切り離せないと考えています。どれほど良い教材やプログラムでも、担い手や予算がなければ続きません。教材を更新する人も、現場を運営する人も必要です。

だからこそ、事業としてどう継続させるかまで考えます。子どもたちへ学ぶ機会を届け続けるには、運営する側にも無理のない仕組みが欠かせません。教材をつくるだけでなく、使い続けられる環境まで整える。そこまで含めて、次の年へつないでいくのだと思います。

ここまで4回、マインクラフトと学びの関係を、私自身の原点から国内外の実践までたどってきました。最終回では、家庭での向き合い方に目を移します。

子どもが長い時間ゲームに夢中になっていれば、「遊んでばかりで大丈夫なのか」と心配になるのも自然なことだと思います。どこまで見守り、どこで声をかけるのか。ゲームをしている時間を、大人はどう捉えればよいのか。

私自身も二人の子どもを持つ親です。最終回では、ゲームとどう付き合うのか、子どもの「好き」や「得意」を大人はどう見守ればよいのか。私自身の子育ての経験も交えながら、お話しします。

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