2026.05.27

年間950件の改善。AIと創る次世代組織

人手不足が深刻化し、市場の変化が激しさを増す現代において企業が生き残るためには、現場の従業員一人ひとりが自ら考え、日常的にアイデアを出し合う「全員参加型」の体制づくりがますます重要になっている。しかし、ただ現場に改善を求めても、日々の業務に追われる中で声は上がらず、一部の意欲的な社員に負担が集中してしまう。これが、多くの企業が抱える実情である。
この構造的な壁を、AIの活用と大胆な組織改革によって突破し、誰もが主体的に動く企業文化を完全に根付かせたメーカーがある。一人ひとりの思考を解き放つ新しい組織論が、日本のものづくりを次なる次元へと導いていく。(文=JapanStep編集部)

部署の壁を越える。全社員が考えて動く仕組み

2026年4月3日、ワイヤレス給電技術の開発・製造を手掛ける株式会社ビー・アンド・プラスは、全社員参加による改善活動の実績と、それを支える組織改革の全容を公表した。

埼玉県に拠点を置く従業員約80名の同社において、2025年に実施された改善は年間950件に上り、2026年もすでに200件を突破している。この圧倒的な数字を支えているのは、固定化された役割を廃し、常に変化し続けることを良しとする組織づくりである。

(引用元:PR TIMES

同社は2026年に組織体制を刷新し、従来の機能別組織を廃止。「モビリティー部門」や「ロボティクス部門」など、市場単位の組織へと再編した。これにより、部門を横断する意思決定がスムーズに進み、顧客価値を起点とした思考が社内に深く根付いている。

そして、この活発な改善活動を後押ししているのが「AIの活用」だ。同社ではChatGPTなどを日々の業務に導入することで、アイデアを具体化する際の技術的なハードルを引き下げている。

(引用元:PR TIMES

これにより、専門外の分野であっても、誰もが改善の主体となれる環境が実現。製造現場では、50代後半のベテラン社員も含め、3DCADを用いた治工具の製作やマイコンのプログラム活用などを習得し、自ら試作と改善に取り組んでいる。事務部門においても、外部の高額なシステムに依存するのではなく、社員自らがAIを活用しながら受注確認や部品発注を自動化するなど、自前で仕組みを構築する文化が定着している。YouTubeを通じて現場で生まれた改善事例を発信し、社内外での共有を図る動きも活発だ。

全員を主役にするAI。組織の新たな形

今回の事例が示唆しているのは、テクノロジーの活用と組織の再編を両輪で進めることが、企業文化を根本から変革するという事実だ。

(引用元:PR TIMES

現場の従業員が業務を改善したいと考えても、従来はプログラミングなどの専門知識が必要となり、実行に至る前に諦めてしまうケースが多かった。しかし、AIが専門知識を補完する「知的な補助線」として機能することで、特別なITスキルを持つ人材がいなくても、誰もが自らのアイデアを迅速に形にできるようになる。つまり、AIは一部の技術者のためのツールではなく、組織全体の実行力を底上げし、全社員を主役にするためのインフラとして機能しているのだ。

こうした「全員が改善の主体となれる組織」は、変化の激しい市場環境への適応力に直結する。日常的な改善活動を通じて培われた「まず試す、すぐ直す」という試行錯誤のサイクルは、ワイヤレス給電市場に向けた新製品開発においても存分に発揮されている。試作から検証、改善までのループを高速で回すことで、未知の市場ニーズに適応した製品を次々と生み出している。

トップダウンによる画一的な指示で動くのではなく、一人ひとりが自律的に現場の課題を見つけ、最新のテクノロジーを味方につけて解決していく。固定化された役割を打破し、全員が知恵を出し合うこの組織モデルは、人手不足に悩む多くの日本企業が次なる成長を勝ち取るために有効なヒントとなるはずだ。