1. AI Base TOP
  2. 記事一覧
  3. 前例踏襲を壊す。AIが変える自治体業務

2026.06.26

前例踏襲を壊す。AIが変える自治体業務

「これまでの業務手順って、無駄なことが多かったんだね」。研修に参加した自治体の職員から漏れたその率直な言葉は、行政の現場で静かに起きつつある意識の変化を鮮明に物語っている。

長年にわたり、役所の業務は過去のやり方を正確になぞる「前例踏襲」が基本とされてきた。しかし、人口減少に伴う深刻な人手不足が地方都市に重くのしかかる現在、これまでのルールを維持し続けることは限界を迎えている。

最新のテクノロジーが行政の現場に導入されたとき、それは単に作業時間を短縮するだけの道具にとどまらない。秋田県の自治体で行われた生成AIの研修風景から、地方行政が自らの枠を超えて新たな価値を生み出すための挑戦の姿を紐解く。(文=JapanStep編集部)

他社比較を経て全庁へ。男鹿市のAI研修

2026年4月28日、行政向け生成AI「QommonsAI(コモンズAI)」を開発・運営するPolimill株式会社は、秋田県男鹿市の職員を対象とした活用研修を現地で実施したと発表した。

 

(引用元:PR TIMES

男鹿市では、2026年3月まで複数の他社製品と併用しながら慎重に比較検討を重ねた結果、「QommonsAI」の正式採用を決定した。今回の研修は、4月からの全庁展開に向けた最初のステップとして実施されたものである。

研修には午前と午後を合わせて約30名の職員が参加。業務で生成AIを利用した経験がある職員はごくわずかで、半数以上が初めてログインする状態だったという。しかし会場には、年度初めの慌ただしい時期にもかかわらず「まずはしっかり使い方を学びたい」という強い熱気が溢れていた。研修時の内容は録画のアーカイブで残されることが事前に周知されていたが、ノートを持参して一言一句を熱心にメモする姿が多く見られた。

(引用元:PR TIMES

実際に操作を進める中で、参加者からは「生成AIって賢い」「おもしろい」といった純粋な驚きの声が上がった。さらに、AIの機能と使い方を理解した上でプロンプト(指示語)に創意工夫を凝らすワークを通じて、職員たちは自らの手で業務改善の糸口をつかんでいった。前例踏襲になりがちな市役所の業務フローに対し、職員自身がテクノロジーの力で改善の光明を見出した瞬間である。

現場に伴走し、行政の意識をアップデート

新たなITシステムを自治体に導入する際、最も高いハードルとなるのはシステムの機能そのものではなく、「現場の職員がいかに日常の業務に定着させるか」という点にある。いくら優れたAIであっても、使い方が分からずに放置されてしまえば、投資は完全に無駄になってしまうからだ。

Polimillが提供する「QommonsAI」は、国内外の法律や政策、自治体事例など数千万件のデータに基づき、エビデンスベースで行政課題の解決を支援する特化型のシステムだ。現在、全国750以上の自治体で利用されている同サービスだが、その普及の裏側には「導入して終わり」にしない手厚いサポート体制がある。代理店を介さない直販体制を敷き、開発企業の社員が直接現地へ赴いて無料の対面型研修を実施。自治体の習熟度や課題に合わせて初級から管理職向けまでカリキュラムを用意し、現場が使いこなせる状態になるまで伴走する。さらに、現場から上がった要望を最短数日でシステムに反映する機敏な開発体制も整えられている。

行政の生産性を高めるためには、テクノロジーの導入と同時に、それを使う人間のマインドをアップデートするプロセスが欠かせない。外部の力に依存するのではなく、現場の職員自らが「自分たちの業務をもっと簡単に、より効率的に変えられる」と気づき、主体的に行動を起こすこと。秋田県男鹿市で始まったこの実践的な取り組みは、地方行政が抱える構造的な課題を乗り越え、日本全体の公共インフラをより持続可能で強靭なものへとステップアップさせる確かな足がかりとなるはずだ。