世界中から人々が集った祝祭、そんな万博が幕を閉じた後、象徴となった巨大建築や当時の空気感をいかに残すことができるのか。解体を前提とした仮設建築の記録を、図面や二次元の写真、映像だけで残すには、どうしても限度がある。あの日、その場に流れていた光の移ろいやスケール感、人々の記憶までを、ありのままに残し続けることはできないか?
建築遺産の保存と体験の継承に向け、最新の3D技術を活用した新たなアプローチが動き出した。2026年7月、東畑・梓設計共同企業体および株式会社梓総合研究所は、2025年大阪・関西万博の大屋根リングをデジタル空間上に再現・保存するプロジェクト「Record-RING」を始動。特設サイトでの無償一般公開を発表した。建築文化をいかに継承するか。184日間にわたる祝祭の記憶を、テクノロジーで後世へ刻む試みがヒントを提示する。(文=JapanStep編集部)
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(引用元:PR TIMES)
2025年大阪・関西万博のシンボル、大屋根リング。その基本設計を担った東畑・梓設計共同企業体と梓総合研究所は、リングの文化的・建築的価値を後世へと保存・継承するデジタルアーカイブプロジェクト「Record-RING(レコード・リング)」を始動した。
Record-RINGの特徴は、万博の会期終了直後に実施した空撮による3Dスキャニングデータを基に、竣工写真や設計意図を組み合わせ、さらに最新技術である「3DGS(3D Gaussian Splatting)」を用いて構築されている点にある。3DGSは、従来の3Dメッシュモデルでは表現が難しかった微細な光の反射や質感、その場の空気感までもリアルに再現できる技術だという。
(引用元:PR TIMES)
構築されたアーカイブは特設Webサイト上で一般無償公開され、世界中の利用者が3D空間上でリングの上を飛び回るような疑似体験を楽しむことができる。単に外観を眺めるだけでなく、リングの成り立ちや設計コンセプトを学べるコンテンツも提供している。
(引用元:PR TIMES)
Record-RINGは建築文化の継承という公益的な視点に基づく、自主プロジェクトとして開発が進められてきた。将来的には、本趣旨に賛同する建築関係者や企業と連携し、個々のパビリオンの記録公開を受け入れるプラットフォームとしての役割や、公的機関によるデジタルアーカイブ構築支援への展開も見据えている。
Record-RINGの登場が示唆するのは、建築や都市の記録が「二次元の図面や写真」から「その場の空気感を含む空間体験の保存」へと進化し始めたという事実である。
万博をはじめとする大規模イベントの建造物は、会期終了とともに解体される運命にあることが多い。しかし、建築の価値は図面や写真に残された物理的な構造だけにあるのではない。空間に差し込む光やスケール感、そしてその場で人々が共有した時間の中にも存在する。最新の3DGS技術を活用して建築の持つ空気感ごとデータ化できれば、解体された後も、その空間体験を後世へ受け継ぐことを可能にする。
(引用元:PR TIMES)
Record-RINGが提示する価値は、貴重な建築遺産の記録を世界中へ無償公開し、文化の継承を民主化した点にもある。専門家向けの資料や研究室の保管庫に眠らせるのではなく、誰もがアクセスできるオープンなプラットフォームとして提供することで、次世代を担う子どもたちや建築を志す人々が、いつでも当時の空間を追体験し、新たな学びやインスピレーションを得られる環境が整うだろう。
形ある建造物が姿を消しても、そこに宿った知恵と体験はデジタル空間で生き続ける。東畑・梓設計共同企業体と梓総合研究所が提示したデジタルアーカイブのモデルは、一過性の祝祭の記憶を「人類共通の文化資産」へと昇華させるための新たな一歩となるはずだ。
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