私たちの生活に欠かせないエネルギーの安定供給。その裏側を支える巨大なシステムが今、テクノロジーの力で新たな次元へと進化しようとしている。長年培われたインフラ運営の知見と、最先端のAIが交差する時、社会課題の解決に向けた大きな推進力が生まれる。関西のエネルギー企業とグローバルIT企業がタッグを組み、次世代のシステム変革へ挑む姿から、日本が直面するインフラの未来図に迫る。(文=JapanStep編集部)
2026年6月、大阪ガス株式会社と株式会社オージス総研、そして日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)の3社は、共創パートナーシップ合意書を締結した。「AIを軸とした次世代ITシステム変革」に向けた検討を開始し、デジタル技術による提供価値の向上と、インフラ事業者としての安定的な基盤強化を目指す。
(引用元:PR TIMES)
本パートナーシップでは、Daigasグループが持つエネルギー事業のノウハウとシステム開発の知見に、日本IBMのAIをはじめとする先進技術を掛け合わせる。具体的には、3つの領域で検討や試行が進められる。
第一に、顧客への提供価値向上だ。多様化するニーズへ迅速に応えるため、AIエージェントなどの適用範囲を拡大し、既存システムを最新技術で再構築する「モダナイゼーション」を推進する。第二に、事業提供基盤の強化である。AIを活用した開発基盤を取り入れ、現行手法以上の省力化と工期短縮を図る。同時に、運用業務の自動化やサイバーセキュリティ対策の高度化も進める。
第三に、これらを支える人材の育成だ。AIやセキュリティといった戦略領域を担う高度なDX人材を、相互交流によって輩出していく。現在、複数の専門チームが立ち上がり、技術検証やロードマップの策定が進められている。2026年度中には、具体的なシステムや業務へのAI適用を一層拡大させていく計画だ。
エネルギーなどの社会インフラを支える基幹システムは、高い安全性と安定稼働が求められる。そのため、最新技術の導入には慎重にならざるを得ず、長年にわたって既存のシステムが使い続けられる傾向にあった。しかし、変化の激しい現代において、旧来のシステムを維持するだけでは、多様化する顧客のニーズや高度化するサイバー攻撃といった新たな脅威に対応しきれなくなる。
(引用元:PR TIMES)
今回の3社による共創アプローチは、こうした巨大インフラが直面するジレンマを超えるための実践的なモデルとなるだろう。企業が単独でAIの知見を蓄積するのではなく、最先端の技術を持つグローバル企業と深く連携し、互いの強みを補完し合う。現場のドメイン知識と最新テクノロジーが融合することで、単なる業務の効率化にとどまらず、より安全で柔軟な次世代の社会基盤が構築されていく。
さらに注目すべきは、AIによる省力化で生まれた余力を、「高度DX人材の育成」という未来への投資へ振り向けている点だ。システムの変革だけでなく、それを運用し、さらなる価値を創造する人材を育成する。この好循環こそが、長引くIT人材不足に対する根本的な処方箋となる。
インフラ企業が自ら変わり、新しい技術を貪欲に取り入れていく姿勢は、日本全体を牽引する力強いメッセージだ。安全と安定を守りながら、テクノロジーで果敢にアップデートを図る。大手企業同士の連携から生まれるこの熱量が、地域社会の課題を解決し、日本の産業を一段階上の成長ステージへと力強く押し上げていくはずだ。