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2026.09.09

繊維とドローンで新産業。坂井市の共創

人口減少と若年層の流出が進む中、多くの地方自治体が地域産業の衰退に危機感を募らせている。しかし、従来の工場誘致や一過性の補助金給付に頼る手法では、新たな産業の自律的な芽を育てることは難しい。特に、歴史ある地場産業を抱える地域において、自前主義の殻を破り、外部の革新的な技術やアイデアといかに結びつけるかは、持続可能な地域経済を築く上での大きな課題だった。
こうした地域産業の停滞を打破すべく、伝統技術や特異なインフラを実証フィールドとして開放する新たなアプローチが動き出した。福井県坂井市は、コンサルティングやVCを手がけるReGACY Innovation Group株式会社と連携し、全国のスタートアップや研究者とともに新産業を生み出す「新産業共創事業」を推進している。昨年度に引き続き、2026年度も「繊維」と「ドローン」をテーマに全国から参加企業を募り、地元企業との共同研究を展開。地域資源を大胆に差し出すオープンな姿勢が、地方発イノベーションの新たな道を切り拓こうとしている。(文=JapanStep編集部)

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空港滑走路と伝統織物。地域資源を開放する実践プログラム

坂井市が推進する「新産業共創事業」は、優れた技術やアイデアを持つ全国のスタートアップや研究機関と地元企業をマッチングし、新産業の創出を目指す取り組みだ。昨年度に続く2年目の試みとして、2026年6月8日から7月27日にかけて今年度の実践プログラムに参加する企業を全国から公募した。


(引用元:PR TIMES

本事業の大きな特徴は、坂井市が誇る固有の地域資源を惜しみなく実証フィールドとして提供している点にある。丸岡町を中心に発展してきた織ネームや経編ニットといった高い繊維加工技術に加え、定期航空便が就航していない福井空港の滑走路を飛行実験の場として開放。さらに坂井市を通る鉄道、ハピライン 春江駅前には活動拠点となる3階建てのビル「SAKAI WEAVE」を開設し、コワーキングスペースや協業の場を提供している。

(引用元:PR TIMES

昨年度のプログラムでは、間伐材を原料とした天然繊維「木糸」を用いて地元企業とTシャツを共同試作した事例や、金沢工業大学が福井空港の滑走路で50キログラムの荷物を積載できる運搬型ドローンの飛行実験を行うなど、5件の先駆的なプロジェクトが生まれた。今年度もこれら継続案件に加え、新たに選定される企業とともに実証を加速させる方針だ。

単なる誘致を脱する。地方の資源が拓く新産業の共創モデル

坂井市が展開する新産業共創事業が示唆するのは、地方都市の活性化において「企業のオフィス誘致」から「地域資産を丸ごと開放する共創」へとアプローチが進化し始めたという事実である。

定期便の飛ばない空港や成熟した繊維産業は、スタートアップの視点に立てば、他にはない貴重な実験場に映る。そうしたニーズに対し、地域が自前主義を捨ててインフラや技術をオープンに差し出す姿勢は、全国の挑戦的な企業を惹きつける磁力となるだろう。

また、この取り組みは下請け中心になりがちだった地場企業にとっても、外部の最先端の知見と交わることで、自社の技術を新素材や新領域へアップデートする契機となる。こうした企業間の協業に対し、行政側も単なる仲介役に終わらず、拠点整備や伴走支援を一体で提供することで、地域全体に新しい挑戦を歓迎する空気が醸成されていくのだ。

地方創生の真価は、外から何かを買い与えることではなく、すでにある地域の資源を外部の知恵と結びつけて再編集することにある。坂井市が提示したオープンな共創モデルは、全国の自治体が地場産業を再興し、持続的な活力を生み出すための実践的なモデルケースとなるだろう。

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